일본 국립국회도서관의 해외입법정보과 시라이 교우(白井 京)가 작성한 '한국의 전자도서관 법제'에 대한 보고서다. 이 보고서에서 시라이 교우는 한국의 도서관법에서 도서관의 책임을 "국민의 정보 접근권과 알 권리를 보장하는 것"이라고 규정하고 있음을 주목하고 있다. 또한 한국의 도서관정보정책은 도서관을 "국가의 발전에 직결된 정보자원을 총괄하는 사회기구" "국가 번영의 기반을 형성하는 기본적인 시설"이라고 지적하고 있음도 눈에 띈다. 또한 2009년 3월 2일 도서관법 개정안 및 저작권법 일부 개정안이 국회 본회의에서 가결되어 3월 25일 공포되고 이 두 개의 개정법이 반년 후인 2009년 9월 26일 시행된 것에 대해 "본격적인 온라인 시대의 도서관법 및 저작권법이다"라고 평가하고 있다.
다음은 시라이 교우가 결론적으로 말하고 있는 대목이다. '지식기반사회'라는 말이 일본에서는 그다지 사용되지 않는 말이라는 것이 이채롭다.
지식기반사회(Knowledge-based society)이라고 하는 말이 있다. OECD의 보고서 등에서도 보여지는 것으로, "새로운 지식·정보·기술이 정치·사회·경제를 비롯해 사회의 모든 영역에서의 활동의 기반으로서 비약적으로 중요성을 늘어나는 사회"를 가리키는 말로 여겨진다. 우리나라(일본)에서도 2005년의 중앙교육심의회 답신 '우리나라의 고등 교육의 미래상'에 있어서 21세기를 지식기반사회의 시대라고 말하고 있지만 그다지 일반화한 말이라고는 말할 수 없다.
그러나 한국에 있어서는, 이 '지식기반사회'는 각양각색인 영역의 정책문서, 연구 보고서, 보도 등에 빈번하게 보여진다. 관민 다에 '지식기반사회'에서 선진국이 되자고 활발하게 움직이고 있다.
한국의 이 지식기반사회에 대한 기세는 정말로 여기에서 소개한 전자도서관법제에도 나타나 있다고 해서 좋을 것이다. 여기에서는 논의를 간결하게 하기 위해서 전자도서관법제에 한정해서 기술했지만, 그것 이외에도 한국에 관한 웹 정보를 통합적으로 검색하기 위한 포털 사이트 '국가지식 포털'구축 등의 사업이 행하여 지고 있다. 나라 전체가 정말로 '지식기반사회'를 향해서 일직선으로 진행하고 있는 것이다. (주12) 2009년 5월에는 국립중앙도서관의 산하기관인 국립 디지털 도서관이 개관했다. 이 디지털 도서관은 인터넷 상의 서비스뿐만 아니라 다양한 디지털 자료를 수집, 정리, 보존하고, 동시에 그 정보를 채용한 서비스로 연구, 개발, 제공하기 위한 거점이 된다고 한다.
한편 우리나라(일본)에서는, 국립국회도서관이 디지털화한 소장 자료를 2002년부터 제공하고 있다. 그 수는 메이지(明治)·다이쇼(大正) 기의 저작권보호 기간이 만료한 출판물을 중심으로 약 15만 점이 되고 있다. 2010년 1월에는 국립국회도서관이 원금료의 보존을 목적으로 해서 행하는 자료의 디지탈화에 관한 저작권법이 시행될 예정이다. 또 국회 도서관법 및 저작권법개 정에 의해 국가나 지방 공공단체 등이 제공하는 인터넷 자료를 국립 국회 도서관이 복제해 수집할 수 있도록 규정되었다.
시라이 교우의 보고서 원문은 다음과 같다. 도서관법 및 저작권법 번역본은 생략했다.
白井 京
Ⅰ はじめに
Ⅱ 電子図書館法制の変遷
1 情報格差解消のための図書館政策
2 図書館情報化推進総合計画
3 2000年著作権法改正
4 2003年著作権法改正
Ⅲ オンライン資料収集に係る関連法改正
1 図書館法改正の概要
2 著作権法改正の概要
Ⅳ おわりに
翻訳:図書館法
抄訳:著作権法
Ⅰ はじめに
遠い過去から現在にいたるまで、そして今この瞬間にも生産され続けている知的成果(すなわち図書、雑誌、学術論文等)を蓄積することは、私たちの文化の発展に欠かせない。最新の研究は、過去の知的成果の蓄積の上に作られていく。
世界各国の国立図書館が、納本制度を設けて国内の出版物を可能な限り網羅的に収集して利用に供するとともに、後世の人々のために保存するという重要な使命を担ってきたのも、その理由による。
しかし、紙という媒体を利用した情報が図書館に保存され、利用に供されてきたのとは対照的に、インターネット上の情報(オンライン情報)は次々に生産され、保存されることがないまま消滅していく。これまで紙という媒体で出版されてきた情報が電子化され、インターネットを介して流通するようになるという傾向も加速している。これらの情報を蓄積することは、図書館にとって大きな課題である。
さらに、アメリカの検索最大手グーグル(Google)社が進める書籍のデジタル化事業「電子図書館プロジェクト」にみられるように、既存の書籍をデジタル化しネット上に流通させる試みもはじまっている。
本稿では、オンライン情報やデジタル化した情報を蓄積し利用者に発信する「電子図書館」の制度をどのように構築するかという議論に資するため、「IT大国」韓国の電子図書館に係る法制について紹介する。
まず、「Ⅱ 電子図書館法制の変遷」でこれまでの経緯と著作権法の関連規定を振り返ったのち、「Ⅲ オンライン資料収集に係る関連法改正」で2009年3月に改正がなされた図書館法及び著作権法の関連規定について解説する。
末尾に、図書館法の全訳と、著作権法の関連規定の抄訳を付した。図書館法については、韓国において「図書館」がどのような位置付けにあり、それがどのように電子図書館につながっているのかという背景を示す必要があると考え、電子図書館に関連する規定だけでなく、すべての条項を訳出した。この韓国図書館法と日本の図書館法を見比べてみてほしい。韓国における図書館の位置付けがわが国のそれとはかなり異なることがわかるだろう。
Ⅱ 電子図書館法制の変遷
1 情報格差解消のための図書館政策
IT大国である韓国は、電子図書館についても進んでいると評価される。では、韓国の電子図書館はどのように進められてきたのだろうか。
まず、韓国における「図書館法」の変遷をみてみよう。
韓国では、日本の図書館法制定(1950年)や、米国の図書館サービス法制定(1956年)に遅れて、1963年に初めて「図書館法」が制定された 。(注1)
制定当時の図書館法は、第1条において「図書館の設置及び運営に関して必要な事項を規定」し、「図書館の健全な発展」を図り「国民の教育と文化の発展に寄与」するとその目的を定めていた。
その後、法律名称の変更を含む何度かの改正を経て、2006年10 月4日、図書館の基本法として現在の形の図書館法が公布された。
この2006年図書館法(施行は2007年)は、第1条(目的)において「国民の情報アクセス権及び知る権利を保障する図書館の社会的責任及びその役割遂行に必要な事項を規定」するとして、国民の情報アクセス権と知る権利を保障することが図書館の社会的責任である(下線は筆者による。)ということを明確にしている。
これをみると、制定当初の図書館法の規定とはかなり異なる印象を受ける。この間、どのような変化があったのだろうか。
韓国では1997年の通貨危機後、IT立国を掲げる政府の主導によりインターネット普及に力が入れられ、日本よりも先にブロードバンドによるネット接続が一般化した。このような国をあげての情報インフラの拡充政策とそれにともなうIT技術の飛躍的な発展は、図書館をとりまく環境をも大きく変化させていった。
この政府主導のIT立国政策推進の結果、韓国では国民のITスキル、情報リテラシーも急速に向上した。しかし、それとともに新たな課題が発生した。IT情報に接することで高度な知識を得ることができる人と、そうした情報に触れることができない情報弱者との間に生じる情報格差(Digital Divide)である。
金大中政権(当時)は、情報格差の解消が国の発展に不可欠と考え、農漁村地域などの情報化疎外地域における超高速情報通信網の構築や、情報リテラシー教育の推進、情報弱者に対する情報通信料金の減免など、情報へのアクセスや活用能力の違いによる情報格差の発生を抑える政策を施行していった 。(注2)
それとともに金大中大統領は、国民の情報化に対する要望を図書館が充足できるように、関係諸官庁が協議し、図書館情報化の総合対策を策定し、推進するよう指示した 。(注3)
大統領のこの指示により、2000年3月、文化観光部(日本の省にあたる。現在の文化体育観光部)は、「図書館情報化推進総合計画」を策定し、総経費3068億ウォン(約237億円)を投入して図書館の情報化を推進した。後述するこの計画は、2000年から2002年にかけて全国各地の図書館のデジタル環境を整備し、電子図書館の基盤を構築していった。
以上のように、韓国では「国民の情報格差を是正」するために、国の総合的な図書館振興政策があり、それに基づいて電子図書館事業を進めていった。
このような経緯が、「国民の情報アクセス権と知る権利を保障する」ことは図書館の「社会的責任」であるという2006年図書館法の第1条の規定に端的に表れている。同法では、「知識情報格差の解消」と題する章(第8章)において、「図書館の責務」として、図書館は、すべての国民が身体的、地域的、経済的、社会的条件に関係なく公平な知識情報サービスを提供されるのに必要なあらゆる措置をとらなければならないと規定している。韓国の図書館情報政策は、図書館を「国の発展に直結する情報資源を統括する社会機構」として、さらには「国の繁栄の基盤を形成する基本的な施設」とみなしているとも指摘される 。(注4)
さらに付け加えていえば、大統領制というトップダウンの意思決定が有効な韓国の政治的土壌も大きく影響している。2006年図書館法改正では、図書館政策の策定及び推進を担う大統領直属の組織として「図書館情報政策委員会」を設置(第12条 図書館情報政策委員会の設置)しており、同委員会は2008年8月に「先進一流国家を先導する図書館」と題する図書館発展総合計画を発表している(第14条 図書館発展総合計画の策定による)。国のトップに立つ大統領の直属機関が図書館の発展計画を策定し、関係各省庁、地方自治体と共に施行していくというのは、韓国における図書館の位置付けを端的に示すものだろう。
2 図書館情報化推進総合計画
では2000年に策定された「図書館情報化推進総合計画」では、どのような事業が行われ、韓国の図書館にはどのような変化がおきたのだろうか。
図書館情報化推進総合計画は、文化観光部と国立中央図書館が中心となって、施設設備の拡充、ネットワークの構築、アプリケーションの提供及びコンテンツの拡充といった図書館情報化事業を推進していくものであった。これにより、2003年12月には全国375の公共図書館にデジタル資料室が設置された。同時に、国立中央図書館が開発した資料管理システムKOLASⅡが全国公共図書館に提供され、国家資料共同目録KOLIS-NET(Korean Library Information System Network : 国立中央図書館と384館の公共図書館が参加する総合目録データベース)が整備された 。(注5)
こうした図書館の情報化推進と同時に、金大中大統領の指示の下に行われたのが、「情報化勤労事業」である。これは、ホワイトカラー失業者への雇用創出のための対策として、図書館の所蔵する情報資源のデジタル化を実施するというものである。この際に、主要図書館の所蔵する資料の原文データベース構築が行われた。原文データベースとは、書籍のページ1枚1枚をスキャンした画像の蓄積である。
これらの事業推進により、公共図書館は、それまでの印刷資料中心から、一挙にデジタル資料サービスまで行えるハイブリッド図書館環境に整備された 。(注6)
付け加えて、同時期には国家電子図書館構築 の進展もあった。これは、8つの韓国国内の主要な図書館が、情報検索用プロトコルの代表的な規格である「Z39.50プロトコル」及びメタ検索に基づく統合電子図書館システムを構築し、デジタル原文資料をインターネットで提供する仮想図書館である。国立中央図書館をはじめ、国会図書館、最高裁判所図書館、韓国科学技術情報研究院などの8つの国立機関が連携し、対象分野の重複投資がないよう構築したもので、参加する8機関70データベースを統合検索できるようになっている。利用者は著作権に抵触しない範囲の原文を無料で閲覧、出力することができる。つまり、自宅にいながら、国立中央図書館等の主要図書館が所蔵している資料の原文を閲覧し、印刷することもできるのである。(注7)
3 2000年著作権法改正
2で述べた図書館情報化推進総合計画の推進に伴い、2000年の著作権法改正が行われた 。この改正は、図書館が所蔵資料をデジタル化(複製)し、図書館内において利用に供すること、さらには、他の図書館に対し伝送することを認める改正である。(注8)
この改正案の主要骨子には、以下の通り記述されている。
「電子図書館構築事業を支援するために、図書館が図書等の著作物をコンピュータ等により複製し、当該図書館及び他の図書館の利用者が閲覧することができるよう伝送する場合は、著作者の利用許諾を受けないでこれを行うことができるようにする」。
これにより、第28条(図書館等における複製等)に第2項として「図書館等は、コンピュータ等の情報処理能力を有する装置を通じて、当該施設とは異なる図書館等において利用者が図書等を閲覧することができるように、これを複製し、送信することができる」という規定が新設された。
この規定により、図書館による所蔵資料の原文データベース構築と他の図書館への伝送による提供に法的な根拠が与えられ、これまで都市と農村の間にあった情報格差も一気に解消することができた。しかし、著作物の「利用」と著作財産権の「保護」を考えれば、若干バランスを欠く規定であったという指摘もある。
4 2003年著作権法改正
図書館所蔵資料のデジタル化と図書館間での伝送に、いわば無制限の免責を与えた上記の2000年著作権法は、2003年に再度改正されるにいたった。ここで、いわば「利用」と「保護」のバランスがとられたのである。
2003年4月に国会で可決された著作権法では、国や地方自治体等を著作権者とする資料を除く一般の図書等について、他の図書館等の館内で閲覧できるように複製したり伝送したりする場合には、図書館は、文化観光部長官が定めて告示する基準による補償金を著作財産権者に支払い、又はこれを供託するように定めた。補償金支払いの方法と手順に関しては大統領令で定めることになり、実際には韓国複写伝送管理センターがその徴収と分配を担当することになった。この補償金の支払いは、1枚印刷につき5ウォン(約0.08円)、1ファイル閲覧につき20ウォン(約1.54円)と価格が決まっており、半年間で徴収した補償金総額は2000万ウォン(約154万円)だったという 。(注9)
また、図書館内でPCを通じて同時に閲覧させることができる資料は、その図書館が所蔵する資料の部数又は著作権者から利用許諾を受けた部数を超えてはならないとの制限がおかれた。図書等については販売から5年以内は図書館間での伝送は禁じられている。
なおこの著作権法改正により、デジタル化した資料を他の図書館で閲覧した場合にかかる補償金の支払いについて、障害者、高齢者、基礎生活保障(日本の生活保護に相当)受給権者といった情報弱者に対する情報格差の拡大につながるのではないかとの懸念があったが、その後の2009年の図書館法改正により、これらの者が支払うべき補償金について国や地方自治体が予算の範囲内で全部又は一部を補助することができるという規定(第44条知識情報格差解消の支援)が新設されている。これもまた、情報格差を是正する図書館政策の一環といえるだろう。
Ⅲ オンライン資料収集に係る関連法改正
2009年3月2日、図書館法改正案及び著作権法一部改正案が国会本会議において可決され、3月25日に公布された。2つの改正法は、半年後の2009年9月26日から施行されている。
この新しい図書館法と著作権法を一言で表現すれば、「本格的なオンライン時代の図書館法・著作権法」である。
これまで、韓国ではオンライン資料の収集について法制化されておらず、国立中央図書館が2004年から限定的な収集プロジェクトであるOASIS(Online Archiving & Searching Internet Sources)により研究報告書、刊行物、政策資料、統計資料等、主にウェブサイトの「資料室」等で提供されるオンライン資料などを収集するに留まっていた 。(注10)
2008年前後から、オンライン資料収集の制度化を試みる法案が提出されていたところ、最終的に2009年3月にこれら2つの法案が同時可決されるに至ったのである。
なお、同時期にオンライン資料収集の制度化を図る「オンライン・デジタル資料納本及び利用に関する法律案」も提出されていたが、結果的にはこの2つの法改正が行われたため、今後同法案が国会において議論される可能性はなくなった 。(注11)
1 図書館法改正の概要
図書館法の改正では、「図書館資料」の概念を、これまでのオフライン媒体から拡大してオンラインを包括するコンテンツとして再定義し、国立中央図書館がインターネット上のオンライン資料を収集し保存することができる根拠となる規定が新設されている。
まず、第2条(定義)において「図書館資料」を「印刷資料、筆写資料、視聴覚資料、マイクロ形態資料、電子資料、その他障害者のための特殊資料等、知識情報資源の伝達を目的として情報が蓄積されたあらゆる資料(オンライン資料を含む。)で、図書館が収集、整理及び保存する資料」と定義した(下線部は筆者による)。「オンライン資料」については、「情報通信網を通じて公衆送信される資料」と定義している。
この「オンライン資料」の収集については、第20条の2(オンライン資料の収集)が新設され、第1項において「国立中央図書館は、大韓民国において提供されるオンライン資料のうち保存価値が高いオンライン資料を選定し、収集及び保存しなければならない」と規定した(下線部は筆者による)。この条では、以下、技術的な保護措置が取られているため収集できない場合には国立中央図書館が協力要請を行うことができ、要請を受けた提供者は特別な理由がない限りそれに応じなければならない(第2項)、収集されたオンライン資料に自己の個人情報が含まれていた者は訂正や削除の請求、権利及び利益の侵害に対する行政審判の請求又は行政訴訟の提起を行うことができる(第3項及び第4項)、販売用のオンライン資料収集については、国立中央図書館が補償金を支払う(第5項)等の規定がおかれている。
なお、収集対象となるオンライン資料の選定、種類、形態や、収集手続き、補償等に関して必要な事項については大統領令に委任(第6項)されている。これを受けて制定された図書館法施行令によれば、オンライン資料とは電子的形態で作成されたウェブサイト、ウェブ資料等で、国立中央図書館長が新設される「図書館資料審議委員会」の審議を経て選定し、告示する資料とされている(施行令第13条の2)。
図書館資料審議委員会は、委員長を含め15名以内の委員で構成され、教育科学技術部、行政安全部、文化体育観光部の者以外に「図書館及び関連分野に関する専門知識と経験が豊富な者のうち、国立中央図書館長が委嘱する者」で構成される(施行令第13条の3)。
2 著作権法改正の概要
改正された図書館法と同日に可決、公布された著作権法は、この図書館法第20条の2の規定によるオンライン資料収集の場合には、複製を認めるよう改正されている。
具体的には、第31条(図書館等における複製等)に第8項「図書館法第20条の2により、国立中央図書館がオンライン資料の保存のために収集する場合には、当該資料を複製することができる」という規定を新設している。
Ⅳ おわりに
知識基盤社会(Knowledge-based society)という言葉がある。OECDの報告書などにもみられるもので、「新しい知識・情報・技術が政治・社会・経済をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す社会」を指す言葉とされる。わが国でも、平成17年の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」において21世紀を知識基盤社会の時代であると述べているが、それほど一般化した言葉とは言えない。
しかし韓国においては、この「知識基盤社会」は様々な領域の政策文書、研究報告書、報道等に頻繁に見られる。官民共に「知識基盤社会」で先進国になろうと活発に動いている。
韓国のこの知識基盤社会に対する意気込みは、まさにここで紹介した電子図書館法制にも表れているといっていいだろう。ここでは議論を簡潔にするため電子図書館法制に限定して記述したが、そのほかにも韓国に関するウェブ情報を統合的に検索するためのポータルサイト「国家知識ポータル」構築等の事業が行われている 。国全体が、まさに「知識基盤社会」に向けて一直線に進んでいるのである。(注12)
2009年5月には、国立中央図書館の傘下機関である国立デジタル図書館が開館した。このデジタル図書館は、インターネット上のサービスだけではなく、多様なデジタル資料を収集、整理、保存し、かつ、その情報を用いたサービスを研究、開発、提供するための拠点となるという。
なお、わが国では、国立国会図書館がデジタル化した所蔵資料を2002年から提供している。その数は明治・大正期の著作権保護期間が満了した出版物を中心に約15万点となっている。2010年1月には国立国会図書館が原資料の保存を目的として行う資料のデジタル化に関する著作権法が施行される予定である。また、同じく国会図書館法及び著作権法改正により、国や地方公共団体等が提供するインターネット資料を国立国会図書館が複製し収集できるよう規定された。
今後わが国がデジタル化時代に見合った電子図書館を構築するにあたり、韓国の事例は関心をひくところであろう。
* インターネット情報はすべて 2009年10月18日現在のものである。
*法案等については、韓国国会「立法統合知識管理システム」<http://likms.assembly.go.kr/>によった。
注
(1)韓国図書館法の沿革及び背景については、以下の文献を参照。金智鉉「韓国の図書館法:歴史的歩みと課題」『京都大学生涯教育学・図書館情報学研究』no.7, 2008.3, pp.83-91.
(2)金智鉉「韓国の2006年図書館法と情報格差への取り組み」『図書館界』vol.60 no.6, 2009.3, p.396. 第Ⅲ章の記述は、同論文に大きな示唆を得た。
(3)2003年6月18日に行われた国立国会図書館と韓国国立中央図書館による第7回業務交流において、韓国側代表の李仙(イ・ソン)情報化担当官室事務官は、以下のように述べている(事務用資料)。「『図書館情報化総合計画』については、面白いエピソードがあります。2000年3月に、韓国国営放送であるKBSの9時台の番組で『図書館の情報化、その死角地帯』という番組がありました。その番組を、たまたま韓国の大統領が御覧になって、その番組によって初めて、図書館がいかに劣悪な環境にあるかということを知り、大統領直々に、図書館の情報化総合計画を推進するようにというお達しがあって、関係省庁が協力してこの問題に取り組んだ、という経緯があります」。
(4)金容媛「韓国における図書館情報政策」『情報の科学と技術』vol.57 no.1, 2007, pp.2-8.
(5)林昌夫「韓国公共図書館の最近の状況」『図書館雑誌』vol.100 no.6, 2006.6, pp.368-371.
(6)同上,p.369.
(7)国家電子図書館のURLは以下の通り。
<http://www.dlibrary.go.kr/JavaClient/jsp/ndli/index.jsp>
(8)著作権法の沿革情報については、国家法令情報センターのウェブサイト <http://www.law.go.kr/LSW/Main.html>を利用した。
(9)「韓国の図書館補償金制度の実態」「カレントアウェアネスポータル」2005.11.10. <http://current.ndl.go.jp/node/3158>
(10)韓国の特に政府機関や研究機関のウェブサイトの多くには、「資料室」というデータベースが設けられており、そこに一般向けに公開される資料が蓄積されていることが多い。韓国国立中央図書館と国立国会図書館による2009年日韓業務交流時の韓国側報告書によると、2004年から2009年8月末までにOASISを通じて収集、保存されたオンライン資料の数は408,648件であり、そのうち著作権許諾を得て一般利用者に提供されている資料は合計で53,291件(13%)とされる。
(11)「オンライン・デジタル資料納本G及び利用に関する法律案」の検討報告書によれば、「このような個別法で制定するか図書館法改正で対応するか考慮すべき」という意見が述べられており、最終的には後者が選択されたことになる。国会文化体育観光放送通信委員会『온라인 디지털자료 납본 및 이용에 관한 법률안 검토보고서』(オンライン・デジタル資料納本及び利用に関する法律案検討報告書)韓国国会事務処, 2009, p.11.この報告書は、韓国国会議案情報システムの以下のページから入手可能である。<http://likms.assembly.go.kr/bill/jsp/BillDetail.jsp?bill_id=
PRC_G0A8O0O9Y2M9E1L2N5A0X0T1R2S4I7>
(12)崔錫斗・田窪直規「韓国における国家知識ポータルとオンライン・デジタル資料の納本制度によるWebアーカイビング」『情報の科学と技術』vol.58 no.8, 2008, pp.401-407.
(しらい きょう・海外立法情報課)
(しらい きょう・일본 국립국회도서관 해외입법정보과)
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