石神井・練馬の両図書館に指定管理を広げるという教育委員会の提案を巡り、労使の対立が厳しさを増しています。教育委員会は、現在、練馬図書館に勤務している32人の図書館専門員について「学校図書館に配置する」という追加提案をしてきましたが、専門員の皆さんはあくまでこれまで通り図書館で働き続けることを求め、この提案を拒否。組合は19日にストライキを設定し、週明け、労使交渉はぎりぎりの局面に入ります。争いの核心は、図書館専門員の継続雇用を保障するかどうかに絞り込まれつつあります。
教育委員会は、10月の区議会の公の場で、「専門員を解雇しない」と明言しています。質疑を採録します。
◆池尻成二委員 …先ほど部長は専門員の方のお力なり、貢献については高く評価する旨のご発言があったように記憶しております。そういうことも含めて、練馬図書館に指定管理を導入した場合に、この非常勤の皆さんについてはどういう対応をしようと、基本的な考え方で結構ですので、お考えを教えてください。
◎教育振興部長 図書館専門員の今までの役割、それから今後の役割についても、区としては非常に重要視しているところでございます。したがいまして、指定管理者をもって解雇するとかという発想は持っておりません。
しかしながら、一方では、これからの身の振り方、処遇については労使協議をしていくという内容でございますので、その活用先については答弁を控えさせていただきます。
「指定管理者(導入)をもって解雇するという発想は持っていない」――所管の部長は、こう明言しました。大切な、重い答弁です。
図書館専門員は特別職の非常勤公務員です。図書館専門員の職は『練馬区教育委員会非常勤職員の設置等に関する規則』に基づいて設置されていますが、この規則では、任期を「1年」と定めています。しかし、規則は「再任することができる」とも定めており、加えてこの再任について通算任用期間の制限を置いていません。同じ特別職非常勤でも「再任後の通算で4年を越えることができない」つまり合わせて5年で雇い止めになるという規定を置いているものも少なくないのですが、図書館専門員は制限なく再任ができることになっています。

実際に、専門員の中には20年以上、再任を重ねてきた人が何人もいます。そして、事務手続き上も、区は継続就労の意向確認をもってそのまま新年度の発令をしてきました。毎年度末に「解職通知」が出されるわけでもなく、選考手続きを改めて行うこともありません。形式は1年任期の短期雇用だけれども、実態的には期限の定めのない継続雇用として就労してきたのです。
冒頭に紹介した部長の答弁は、図書館専門員のこうした雇用の実態を踏まえたものです。単年度任用という建前が通用するなら、「解雇」などと言わずとも、少なくとも来年3月末ですべての専門員が自動的に失職します。実際にはそうではないから、つまり事実上は権利として再任を受けるべき地位に専門員が置かれていることを承知しているから、部長は「解雇しない」とあえて答弁したはずです。
「解雇しない」ということの意味は、本人が希望する限り図書館専門員としての任用を続ける(更新する)ということです。しかし、練馬図書館も指定管理に移せば、そこで働いてきた専門員は働く場を失います。そして、当の専門員の意に反してその職を奪えば、これは「解雇」以外ではありえません。
教育委員会は、組合に対して学校図書館に「配置換え」するという提案をしてきましたが、図書館専門員は学校図書館ではなく図書館での業務にあてるために設置された職です。設置規則が作られた経緯や運用の実態からしても、図書館専門員がそのまま学校図書館の業務にあたることを想定しているとはとうてい思えません。図書館専門員を学校図書館に移すためには、図書館専門員としての職をいったん解いたうえで新たな学校司書職などとして任用するしかないでしょう。
そもそも地域の図書館と学校図書館は、同じ「図書館」とはいっても全く異なる役割を持ち、異質な専門性が求められます。前者は社会教育、生涯学習の施設。後者は学校教育の一環として設置された施設です。図書館専門員に学校図書館に行けという提案は、規則の主旨を踏み越え、専門員の仕事と経験と誇りの何たるかを理解しない、あまりに乱暴なものです。専門員の皆さんが、当局の「配置換え」提案を図書館専門員としての解職・解雇の提案と受け止めたのは当然です。
「解雇しない」という部長の議会答弁は、たいへん重いものです。この答弁を真摯に順守するのであれば、当該の専門員がこぞって受け入れを拒否している提案を撤回し、専門員が引き続き図書館で働き続けられる提案をし直すべきです。指定管理を広げる提案そのものを撤回するか、あるいは他の図書館――といっても残る直営館は光が丘図書館だけになってしまいますが、その光が丘図書館に練馬図書館の専門員の働く場を確保するか。いずれにしても、図書館で働き続けたい、力を生かしたいという専門員の思いを活かす道を誠実かつ真摯に探ることが、教育委員会に今、求められている責務です。
これまで通り区立図書館のために働き続けたいという専門員の皆さんの思いを、私は支持します。特別職は地方公務員法の適用を受けず、したがって一般の公務員のような争議権の法的制限は受けません。ストになれば、大きな混乱は避けられません。スト回避のために、教育委員会の賢明な決断を強く望むところです。